調査員ブログ

バックグラウンドチェックでスピード離職を防止

新年度となり2カ月が過ぎました。少し前の話となりますが、4月前半に新社会人による即日退職や退職代行サービス利用の話題がニュースやSNSで大きく取り上げられていました。今年も、ある退職代行サービス業者には、4月1日の入社式当日に新入社員からの代行依頼が相次ぎ、昨年同時期の2倍以上のペースで依頼があったようです。ある業者によれば、4月1日だけで5件、3日には20件、4日には13件、そして週明けの7日には42件と、わずか1週間で100件近い依頼が寄せられたとのこと。なお、4月10日時点では、140人以上の新入社員から依頼があった、と発表されていました。

こうした「超早期退職」ともいえる現象は、当社が昨年行ったバックグラウンドチェック(採用調査、リファレンスチェック、前職調査)の調査結果にも表れており、昨年2024年は過去最多となる早期離職の調査報告がありました。前述の代行業者が、利用者に利用理由についてアンケートを行ったところ、入社前に聞いていた話と実際の労働条件や仕事内容が違った、求人票に書いてあった給与や勤務地が異なっていた、という声が目立ちます。他に「職場の雰囲気が自身に合わなかった」「研修を受けてみてこの会社は自身の理想と大きく違うと感じた」「上司や先輩の言葉にパワハラと受け取れるひびきがあり、心が折れてしまった」といった回答も多くあり、入社後に直面したリアルな現場と本人が考えていた事のギャップが離職のきっかけとなっているケースが多いようです。つまり「イメージとの乖離」が、新入社員のモチベーションを大きく損なわせ、早期退職の考えを後押ししているようです。

通常の企業では、いきなり「辞めたい」と言えば、理由の説明を上司や人事担当者から求められるのが一般的です。退職代行業者を使えば、職場の上司と直接のやり取りをせずに速やかに職場を離れる事ができる為、精神的な負担を軽減できる、ということです。元々このサービスは、退職を頑なに拒否されるようなブラック環境で苦しむ労働者を救済する目的で生まれた、と聞きます。ところが近年では“手軽な退職手段”としての利用が進んでおり、サービス本来の想定とにズレが生じている、との指摘もあるようです。

企業にとっては、せっかく選考を重ねて採用した新入社員が、すぐに辞めてしまう事は大きな損失です。採用活動には、時間もコストも多くかかります。その上、即日退職者が出てしまうと、同僚の意識にも影響が出てしまい、芋づる的に同様の退職方法をとる社員が出る恐れがあり、残された社員の負担は確実に増えてしまいます。このようなミスマッチが起こる背景には、職業紹介業者がAIを使い適性を判断して推薦をしてくる等もあり、採用候補者の本音や実態が捉えにくくなっている事も実態としてあるようです。

AIはスキルや経歴といった表面的な情報には強い一方で、応募者の価値観やコミュニケーション能力、人間関係構築力など、実際の職場適応力までは判断しきれません。職務への姿勢や価値観、人間関係構築力等は、実際に採用候補者と共に過ごした事がある人だけにしか分かりません。これは新卒採用予定者だけでなく、中途採用の応募者にも言える事です。当社の採用調査の結果でも「面接時の印象が良かったから」だけで採用を決めてしまい、採用後にトラブルが続出した等の報告もあります。短時間の面接では、応募者が本音を見せずに“良い印象”を演出することも可能であり、企業側が見抜けないリスクも存在します。このような状況を踏まえ、リスクを防ぐための採用前の調査は必須と言えるでしょう。

中途採用者のバックグラウンドチェックの導入は、前職での勤務実績や上司、同僚からの評価の他、離職理由等を事前に得る事で、採用後の労使間の齟齬を減らし、採用の成功率を高め、長い期間の活躍が期待できる人材を迎え入れる可能性を高める事に有効です。もちろん、バックグラウンドチェックをすれば、すべてが分かり、解決する訳ではありません。ただ、採用後のトラブルを防ぎやすくなる事は期待できます。選考にかける時間と労力が無駄にならないようにする為に人材採用前の調査を活用する事は、企業の健全経営にプラスになります。時代や価値観の変化はありますが、いつの時代も良い組織づくりには、相手をよく知り、会社を知ってもらう事が大切です。求人の応募者に「職業選択の自由」があるように、雇用側には「従業員を選ぶ自由」があり、これは最高裁も認めた権利です。もちろん、バックグラウンドチェックも法的に認められており、適切な運用を行えば問題がない事をもっと多くの方々に知ってほしいと思います。より良い労使関係を築く為にも、これからの人材採用活動には、バックグラウンドチェック(採用調査、リファレンスチェック、確認確認調査)を活用すべきと考えます。