面接や履歴書だけでは応募者の人物像を十分に把握する事は困難です。
人事担当の方なら、求人応募者の態度が面接時と入社後で全く変わってしまった、といった事を見聞きした経験があるかと思います。
近年は、就活中の学生や社会人経験の少ない若手層の採用選考において「応募者の本音を引き出す」「実際に働く場面を想定し、性格やコミュニケーション能力を見極める」といった点が重要視されているようです。その為、応募者の問題点を事前に把握し、採用リスク等に対応できる手法が求められています。
その中でも変わった採用検討の方法に「人狼ゲーム採用」があり、採用プロセスに取り入れる企業が東京に多いとも聞きます。
同ゲームは、参加者が「村人」と「人狼」の役に分かれ、会話や推理を通じて人狼を見つけ出すコミュニケーション型のゲームです。ゲームを進めていくにつれ、参加者の思考力や洞察力、コミュニケーション力、チームワークの他、場の空気の作り方等が自然に表れます。つまり、その人の行動パターンや物事の考え方が可視化される訳です。求人を出した企業は、応募者のゲーム中の振る舞いから、他者との関わり方を観察し、応募者の特性や職場適性を評価するのだそうです。
時代が変われば、様々な採用方法が編み出される事に驚かされます。
この手法は、面接だけでは判断ができないような、採用候補者の行動や意思の傾向を把握できる為、導入した企業では「ミスマッチによる入社後のリスクの軽減」に有効な手段と考えられているようです。確かに発言のタイミングや話の進め方、周囲との関わり方を知る事は、職場でのコミュニケーション力や協働力を見極める参考になると思います。
人狼ゲーム採用の導入をしている、ある東京の企業では会社説明会内で複数回ゲームを実施し、その後に面接へ進める方法をとっています。面接時には「なぜそのタイミングで発言したのか」「どのようにチームの空気を読んで行動したのか」といった質問を行い、参加者の思考過程や協調性を把握するそうです。これにより、従来の形式的な面接だけでは得る事ができない情報を得て、企業と応募者双方の理解を深めているようです。
ゲームを通じた他の採用手法に「ポーカー採用(主に確率やリスクを計算しながら戦略的に意思決定をする能力を見る方法)」や「eスポーツ採用(瞬時の判断力、連携力、動揺した際の切り替えの速さを見る方法)」等もあり多様化しています。いずれの採用方法も本人の行動に重きを置いています。
これらの様な採用における選考方法は、応募者の本質を知る為の新しいアプローチとして、今後も注目されるだろうと思います。遊びに近い形式のゲームを通じて、求人応募者の「姿」を知るという点は、意義があると言えるでしょう。
ただ、これらの採用選考手法も万能という訳ではありません。
注意すべきは、人狼ゲームが本来「嘘を見破るゲーム」であるという点です。皮肉な事に、自然な演技で周囲を欺く「嘘が上手い人」が高い評価を得てしまうリスクを孕んでいます。ゲーム上で、いかに完璧に振る舞ったとしても、それがその人の真の姿であるとは限らず、現実の世界では、経歴詐称やハラスメント等の過去のトラブル歴を隠しているかもしれません。ゲーム中の行動が必ずしも職務適性や本人の事を反映しているとは限らないのです。
また、ゲームへの向き合い方は人それぞれで異なる為、ゲーム慣れしていない応募者の場合は、状況を理解できずにゲームに飽き、就職に対する熱量が下がってしまう事もあるそうです。そうなると、職務適性とは別の要素で採用の合否が決定してしまう可能性も出てきます。
その為、ゲームの結果だけでなく、筆記や実技試験の他、バックグラウンドチェックで得た採用候補者の実績等と組み合わせ、応募者を評価する事が重要と考えます。
ゲームを用いた採用選考方法は、まだまだ課題のある発展途上の手法です。これらは手段の一つであり、企業は方法が目的化してしまわないよう注意を払う必要があります。
例えば、応募者の言動を観察しその人の事を知る為の導入が、ゲームの成立を優先するようになってしまえば、本末転倒です。
調査員としては、バックグラウンドチェック(リファレンスチェック、前職調査)とゲームで得た評価を合わせて、総合的に判断する事で採用リスクを減らし、実のある選考ができると考えます。
採用活動の選択肢に、採用前の経歴調査を加える事をお勧めいたします。

