採用調査(バックグラウンドチェック、リファレンスチェック)を行っていると、調査員の思い込みや先入観が調査の妨げになる事があります。
採用前調査の目的は、求職者や採用候補者の経歴や勤務実績を確認し、採用判断に必要な情報を得て、採用に伴うリスクを把握することです。しかし、調査員である私の癖なのか、調査を進める中であいまいな事項が出てくると、どうしても経歴詐称を疑う方向へ考えが向きがちになります。
もちろん実際に経歴詐称が判明するケースもあり、疑って正解だった事も多いです。一方で別の事情が存在する事もあり、一歩間違えば、何の問題もない人の評価を下げてしまう事になる可能性もある、という事です。
一例として、私が担当した採用調査(バックグラウンドチェック)では、私自身の思い込みもあり、調査が二度手間になった案件もありました。
その男性調査対象者の過去の勤務先へ確認を行っても在籍記録が見当たらず、複数の職場で確認が取れませんでした。バックグラウンドチェックの現場では、在籍記録がない状況では経歴詐称を疑わなくてはなりません。ところが、直近の勤務先へ確認を行った際、対象者について「彼女」という表現が使われた事で状況が変わりました。
確認の結果、男性として調査を進めていた対象者は以前女性として勤務しており、性別適合手術を受け、その後に改名を行っていた事が判明しました。履歴書には旧氏名の記載がなかった為、当初は現在の氏名だけで調査を進めていました。在籍が確認できなかった職場に当時の氏名で再確認したところ、申告の職歴全てに裏付けが取れ、勤務評価についても良好な内容が確認できました。
結果として、この案件は経歴詐称者ではありませんでした。
調査員は疑う視点を持つ必要がありますが、同時に様々な可能性を排除しない姿勢も重要になります。この一件は、その事を改めて考えさせられる調査でした。
また、別の候補者については、当初は女性として調査を進めていましたが、確認を行う中で、過去には男性として勤務していた事が判明しました。改めて過去の勤務先に確認を行ったところ、勤務態度や能力面については概ね良好な評価が得られました。一方で、履歴書に記載された在籍期間と実際の在籍期間には、大幅な相違が確認されています。
正確な情報を得られた事は幸いですが、この件も、私自身が女性だと思い込んでいた事で、二度手間になってしまいました。
日本では結婚を機に女性が姓を変更するケースが多い一方で、男性が姓を変更する場合も増えてきました。こうした氏の変更により、現在の氏名だけでは過去の勤務先で確認が取れない場合もあります。
採用調査を行う際には、男性であるから姓は変わっていない、女性であるから姓が変わっている可能性がある、といった思い込みを持たずに確認する事も必要だだと再認識しました。
このように、採用調査(バックグラウンドチェック)を進めていると、確認が取れない理由を経歴詐称と考えていたものの、調査を進める中で全く別の事情が判明する事があります。重要なのは、最初に抱いた印象だけで結論を出すのではなく、確認が取れない理由について様々な可能性を考えながら、一つ一つ事実を確認していく事だと考えています。
実際の採用調査では、能力不足が判明した人もいれば、勤務態度に問題がある人もいます。また、申告内容に相違が確認されるケースもあります。一方では、履歴書や面接で申告した以上の良い評価が得られたり、人柄の良さが得られたりもします。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックにおいて重要なのは、申告内容に相違がないか、過去の勤務状況に問題はないのか、良くも悪しくも履歴書や面接で明らかではなかったことを客観的に確認する事です。
企業が採用選考時に求職者について知りたいのは、その人がどのような人物であり、入社後にどのような貢献やリスクが想定されるかという点です。その為には、先入観に左右される事なく、一つ一つの情報を丁寧に検証していく必要があります。
このような案件を通じて、調査員である私自身も「事実を確認する事」と「決めつけない事」の両方の重要性を改めて認識しました。今後も採用調査を通じて、企業が適切な判断を行うための客観的な情報提供に努めていきたいと考えています。
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