調査員ブログ

バックグラウンドチェックは早期退職防止に有効

日本の祝日は一年間で16日あります。そこに振替休日や土日を加えると、実質的な休日数は年間で約120日前後。特に4月末から5月上旬にかけて大手企業では10連休という長期休暇が発生する事もある程、休日が多い国です。ところが、その連休明けには「休みすぎで疲れてしまった」と考える昭和生まれの人は意外と多い様です。ただ、時代なのか連休明けに「気持ちを引き締める意味で仕事に集中」すると言う事は過去の話になりつつあります。実際、バックグウンドチェックをしていると、若い世代を中心に、ゴールデンウィークや盆休み中に退職を決意した、というケースが年々増えている事が実感としてあります。

若年層の採用調査(バックグラウンドチェック、リファレンスチェック)をしていて感じるのは「休み明けの憂鬱な気分を引っ張るなら、いっその事、会社とおさらば」と考え退職に至るなど、仕事が合わなければ環境を変える、と判断するまでの速度が速くなっている事です。また、退職代行業者を利用すれば、上司に直接辞意を伝えることなく即日退職も可能です。今では業者を通じて離職する人も珍しくなく、若い人達の退職に対する心理的ハードルは確実に低くなっています。倒れる程に無理をして働く事を美徳とは思いませんが、私としては、人生に関わってくる行動については、熟考してほしいと思います。

人材不足のご時世ですから企業としては「長期間勤続できる組織を作る」事は大切です。ただ、給与や拘束時間等、待遇、福利厚生面の改善には限界があります。そこで別の選択肢として「長期勤続する人材を発掘する」事にも目を向けて良いかと思います。つまり、採用選考の時点で、採用候補者の職能だけでなく、人柄や前職の退職理由等を理解して見極める、と言う事です。その為には、採用前のバックグラウンドチェックが重要になってきます。調査を行う事で、採用候補者の経歴等の申告の相違だけでなく、勤務実態を把握する事ができ、時には、犯歴の有無まで判明する事があります。履歴書や面接だけでは分からない情報を得る事で、長年の勤続が期待できそうな人材を雇用できる可能性が高くなります。

当社のバックグラウンドチェック結果報告では、およそ3割の採用候補者が何らかの経歴詐称、トラブル、好ましくない退職をしていた、という事が判明しています。例えば、無断欠勤後の退職や横領等による懲戒処分、申告内容と勤務実態が大きく乖離していたなどです。これらを知らず採用をして同じ事が起これば、大きな損失を招きかねません。また、一度雇ってしまうと退職させる事は困難で、酷い場合「会社からハラスメントがあった」と訴えられ、高額の和解金を払う必要に迫られる事もあります。バックグラウンドチェックには、採用候補者を篩いにかけると言う一面もありますが、採用後のリスクを減らす為の保険でもあると私は考えます。

また、最近ではリファレンスチェックを導入する企業も増えてきました。これは、候補者が指定した前職場の上司や同僚にヒアリングを行い、実際の働きぶりや人柄を確認するものであり、回答を得る確率はほぼ100%です。ただ、採用候補者と仲が良い人が選ばれる事が多く、候補者の不利になる様な話をする人はあまりいません。リファレンスチェックは当社でも承っていますが、私の感想としてこの調査はどちらかと言えば、企業と応募者の相性の確認的な意味合いが強い様に感じます。

一方、バックグラウンドチェックは、前職場にてヒアリングを行う点は同じですが、当社側で取材相手を決めて取材を行なう為、候補者が指定した人物に取材を行う訳ではありません。その為、取材を受けた方は比較的正直な意見を述べる事が多く、対象人物の適性や問題の有無を確認する事に適していると思います。ただ、対象者から頼まれた訳ではない為、取材相手の方針により全く回答を得る事ができない時もあります。

上記2つの採用調査についてはどちらも一長一短があり、目的に応じて利用をすれば良いと思います。何れにしても、チェックを怠るとミスマッチを生みやすくなり、結果的に離職率が高くなる可能性が出てきます。採用は、スタート地点でありながら、組織づくりの未来を決める分岐点でもあります。候補者の内定の前には、書類選考や面接、適性検査等と共にバックグラウンドチェックやリファレンスチェックを活用して、より多くの判断材料を手にする事が重要です。

人手不足が慢性化する中、求職者の売り手市場が続いていますが、採用は「数を満たす」ためではなく「戦力を育てる」ために行う方が良い結果が得られる事があります。特に、従業員数が限られている中小企業では、一人の採用が会社全体に与える影響が大きいため、採用の失敗はダメージに直結します。限られた人材資源を最大限に活かすためにも、履歴書の内容や面接での印象だけでなく、バックグラウンドチェック等で得た情報を加えて選考に臨むことは、将来的な職場の安定にもつながります。雇用時のリスクを減らすためには、選考の段階で応募者の事を良く知ることが肝心です。そういった意味で採用前の職歴(前職)確認調査は有効な手段であると言えます。