調査員ブログ

入居者調査の重要性 ~トラブルを未然に防ぐための水際チェック~

企業の採用において、バックグラウンドチェック(採用調査)やリファレンスチェックの必要性が認知され広く実施されるようになってきました。それらと同様にマンションやテナントビルへの新規入居者調査についても、不動産管理を行っていく上では軽視できない重要なプロセスとなっています。物件の安全性や安定した運営、加えて入居者全体の満足度を確保するための極めて大切な事前チェックなのです。

人材採用の現場では、一度入社してしまった後に問題が発覚しても、法的な制約もあり簡単に退職させることはできません。これは不動産管理の世界においてもまったく同じ構図が見られます。トラブルメーカーが入居してしまってからでは、退去に至るまでに大きな労力と時間、そして費用が伴うケースが珍しくありません。

実際に、当社が行う企業信用調査においても、以前入居していたテナントビルでの家賃滞納などが発覚するケースがよくあります。訴訟などを提起し家賃を回収できたとしても、それに費やした労力や時間は重いコスト負担となります。また、家賃滞納に限らず、近隣トラブルや無断転貸、反社との関係が疑われる行動など、過去の問題行動は将来にも高い確率で繰り返される傾向があります。故に事前調査による水際対策は、不動産の管理や経営にとって極めて重要なリスク管理の一部と言えるでしょう。

近年、特に注意が必要になっているのが反社会的勢力(反社、半グレ、トクリュウ、暴力団)に対するリスクです。入居者の反社との関わりが発覚した場合、物件へ与える影響は深刻です。入居を敬遠され空室が増加し、ひいては不動産価値の下落といったことも考えられ、不動産オーナーや管理会社にとって大きな打撃となり得ます。現代の不動産経営において、反社チェックは欠かせない項目なのです。

また、訪日外国人の増加やグローバル化の進展により、外国籍の入居者や外国資本による不動産取得も年々増加しています。不動産所有者の透明性を高めるため、日本政府が不動産登記に所有者の国籍記載の義務化を検討していると報道されたことは記憶に新しいでしょう。不動産市場の変化は、より精緻な情報収集と事前のチェック体制を管理会社などにも求めているのです。

当社が過去に実施した調査では、事前調査の重要性を象徴する事例がありました。対象者は、東京都に本社を置く会社に勤める50代の独身男性で、外見上は特に問題がありませんでした。もともと分譲マンションの一室を所有し住んでいましたが、それを売却して転居を予定していたマンションのオーナーから入居前調査の依頼が寄せられました。

調査を進める中で、対象者の男性が以前住んでいた東京都の分譲マンションで管理組合の理事長を務めていたことが判明しました。その後、建物の大規模修繕工事に関し、その男性が特定の工事業者に便宜を図り、工事代金に上乗せされたリベートを受け取っていたという情報が複数の関係者から得られたのです。さらに、その工事業者には反社会的勢力との近いつながりが噂されていたことも明らかになりました。

加えて、修繕工事を巡ってその男性は理事長を解任され、新たに組織された管理組合と裁判で係争中であることも把握しました。このような背景を持つ人物を、何のチェックもなく入居させてしまった場合、マンション全体の管理運営に多大な影響を及ぼす恐れがあります。

この事例は、事前調査によって得られる情報が、物件の安全と運営の安定を守る上でいかに重要であるかを示す典型例です。

入居者調査は疑うための調査ではなく、入居者、オーナー、管理会社の三者すべてを守るために存在します。適切なチェックを行うことで、問題のある入居を未然に防ぎ、健全で安心できる居住環境を実現できます。また、物件のブランド価値や収益性を長期的に維持するための大切な投資でもあります。

不動産経営において、事前に知るという情報の力は何よりも強い武器です。テナント入居者等の調査は、規模の大きな調査でなくとも、安定運営の土台を支える最も有効な手段の一つです。
リスク管理の観点から、ぜひ入居前の段階での調査導入をご検討ください。