調査員ブログ

企業の資産背景チェックが信用調査で欠かせない理由とは

企業信用調査(与信調査)を行ううえで、調査対象企業の「資産背景」を把握することは極めて重要なプロセスです。財務諸表や売上推移といった表面的な数値情報だけでは、企業の本当の体力は見えてきません。企業が長期的に安定して事業を継続できるかどうかは、最終的にはどれだけの資産を保有し、負債とどのようなバランスを保っているかにかかっています。

特に日本では、代表者が株式の大半を握り、自ら企業の経営と所有を同時に担う「オーナー企業」が多数を占めています。そのため、企業の資産背景だけでなく、代表者個人の資産状況を確認することも信用調査における重要なチェックポイントです。

一方、代表者が大株主ではない大企業の場合、代表者個人の資産を詳細に調べても信用判断への寄与度は相対的に低くなります。つまり、調査対象の企業形態によって、確認すべき資産情報の優先度は異なってくるのです。

 

資産は企業の「体力」そのもの

企業の業績は市況の変化によって大きく揺れ動きます。今日まで好調を維持していた企業であっても、突然の景気後退や市場の急変によって売上や利益が急落することは珍しくありません。

こうしたタイミングで企業が存続できるかどうかを左右するのが、まさに資産という体力です。

企業の体力が弱まると、人間の免疫力が落ちて病気にかかりやすくなるのと同様に、不安定な企業にも危険が近づいてきます。甘い言葉で近寄ってくる詐欺師、資金繰りの弱みにつけ込む事件屋、反社会的勢力(反社)による関与など、リスク要因は一気に増幅します。

資産の乏しい企業ほど、こうした不正リスクに巻き込まれやすい傾向があり、信用調査において資産背景を精査する意義はここにあります。

 

銀行は教えてくれない。だから「不動産チェック」が重要

資産背景の確認といっても、企業の預金残高や借入額を銀行が教えてくれるわけではありません。金融機関の情報は守秘義務の壁があるため、外部からは基本的に把握できません。また、財務諸表にしても、上場企業であれば公開情報をチェックできますが、多くが決算公告をしていない中小企業の場合は、財務諸表の確認自体ができません。また、その決算書の内容が真実である保証もありません。

そこで有効なのが「所有不動産のチェック」です。企業が保有する不動産は、登記簿を確認することで、以下のような重要情報を把握できます。

・抵当権の有無と設定額

・差押え・仮差押えの記載

・所有者名や共同所有の状況

・抵当権者が誰か(銀行か、一般企業か、個人か)

外見上は繁盛している企業に見えたとしても、実際には所有不動産に多額の抵当権が設定されている、さらにすでに差押えが入っているケースは珍しくありません。

このような企業は、表向きは立派なビルを構えていても、裏側は資金繰りに苦しむ張りぼて状態で、少しの逆風でも大きく傾く危険性があります。

 

抵当権者の確認は「反社チェック」にもつながる

特に注意したいのが「抵当権者が誰なのか」という点です。銀行などの金融機関による抵当権設定であれば一般的ですが、なかには一般企業や個人名義で抵当権が設定されているケースもあります。

このような場合、過去の事例から見ても注意が必要です。

当社が担当した調査の一例では、調査対象企業の不動産に設定されていた抵当権者(個人)を確認したところ、その人物は業績の悪い企業を乗っ取って私物化する「事件屋」であることが判明しました。

このケースでは、不動産登記簿の情報を調べ、抵当権者の素性をチェックしたことで、企業が反社会的勢力や不正グループと接点を持っていた可能性を早期に把握できたのです。

こうした情報は、財務資料や通常のヒアリングだけでは得難いものです。不動産登記のチェックは、信用調査における反社チェック、リスク検証の重要な手段なのです。

 

資産背景の確認は、健全な取引につながる

取引先の企業がどの程度の資産背景を持ち、どれほどの体力を備えているかを把握することは、自社の取引リスクを低減するうえで欠かせません。

不動産のみならず、役員構成、株主構成、関連会社、役員個人の資産情報など、多面的な情報を総合して判断することで、初めて企業の健全性が見えてきます。

信用調査は決して「疑うための行為」ではありません。

健全な企業との長期的な取引を実現し、不適切な企業や反社会的勢力との関わりを未然に防ぎ、企業活動の安全性を確保するためのプロフェッショナルなプロセスなのです。