調査員ブログ

ハラスメントと経歴詐称、見えないリスクを防ぐバックグラウンドチェック

近年は何かにつけ「ハラスメント」が叫ばれるようになりました。セクハラやパワハラといった代表的なものに加え、モラハラ、マタハラ、アルハラ、さらにはオワハラ(就活終われハラスメント)、ロジハラ(正論を装い圧力をかける事)、フキハラ(不機嫌ハラスメント)等、次々と新しい呼称が登場しています。社会全体が働く人の尊厳を守る方向へと進んでいる以上、ハラスメント対策はどの企業にも欠かせない経営課題のひとつとなったと言えます。

近年のハラスメント行為については、別の問題も生み出しています。それは受け手の主観によって、上司の正当な指導や注意がパワハラと受け取られてしまうケースです。当社のバックグラウンドチェック(採用調査、職歴調査)でも、前職場でパワハラを受け退職をした、との退職理由が履歴書に記載されている例を見かけます。もちろん、本当に被害を受けて苦しんだ方もいますが、その一方で、事実の誇張や一方的な主張だけのケースがある事も事実です。

例として、以下のような事例もありました。ある日の早朝に、上司が部下を連れ立って取引先へ向かう予定をしていました。ですが、同行するはずの部下は待ち合わせの時間になっても現れません。上司は、その部下に連絡をしましたが応答はなく、何度目かの連絡でやっとつながり、現地合流を指示しました。後日、遅刻した部下から会社に「何度もしつこく電話があり、一人で現場に向かわされ、精神的な負担を受けた」との訴えがあったそうです。その上司は、遅刻した部下が次に行うべき行動を指示した上で注意をしましたが、叱責はしなかったとの事。訴えられた上司は「遅刻の注意すらパワハラになる時代だ」と嘆いていました。

職場では、指導とハラスメントの境界線が曖昧になる事も時にはあります。たとえ事実関係が不明確であっても、訴えが公になると、企業側が不利になる場合が殆どです。

このような行為は一般に「逆ハラスメント」と呼ばれ、企業にとって悩みの種の1つです。通常、ハラスメントと言えば、上から下へ圧を掛けるケースを指します。逆ハラは、上司の立場を逆手に取って、部下が不満等の感情的な理由から「ハラスメントを受けた」と主張するケースの事です。

現に、些細なトラブルを利用して、職場から慰謝料や休職期間を得た後に転職をする、等を繰り返した悪質な人物の例もあります。提出された履歴書に被害者として記されていても、実際はそれとは真逆の場合もあります。

また、別のケースでは「上司からパワハラを受けた」と訴えを起こした社員について、過去に同じ例がないか調べてほしい、との依頼がありました。調査の結果、対象者はパワハラを受けておらず、逆にパワハラをする側の人物だった事が判明。また、問題行動を繰り返していた事で、懲戒解雇されていました。職場は、不当解雇等で訴えられないようにするために弁護士を交え、被害者の証言を多数収集した上で処分にあたった、との事でした。こうしたケースでも、バックグラウンドチェックで内定前に本人の情報を把握していれば、トラブルを未然に防げた可能性が高く、採用調査を実施する意義は大きいと言えます。

ハラスメントは容認できる行為ではありません。ただ、被害の訴えが事実に基づくものか、誤解や誇張によるものなのか、を突き止めなければ、企業は取り返しのつかない判断ミスを犯してしまう事もあります。

ある機関の近年のアンケート結果によると「部下への注意や指導がハラスメントとみなされるのではないかと不安を感じる」と回答した管理職は6割を超えていたそうです。その他、訴訟のリスクを恐れ、問題社員に対してすら適切な対応を取れない企業もあるとの事。現代社会は、ハラスメントを防ぐだけでなく、不当なハラスメントの訴えから企業を守る事も求められているようです。

ハラスメント有無の他に「経歴詐称」も依然として採用の現場では深刻な問題です。虚偽の申告は、採用後に判明すれば企業にとって悪影響を及ぼす事もあります。採用活動において重要なのは、正しい情報に基づく判断であり、候補者の選考時は、応募者の経歴、人間性、過去のトラブル等を多面的に把握しなければ、見えないリスクを抱える事になります。

実際に「面接では印象が良かったが、入社後すぐに体調不良を理由に休職が続いた」「怒りっぽい性格で、周囲との摩擦が多くチームワークが乱れた」といった例も見られます。こうした事の多くは、採用前に調査をするだけで回避ができたと思われます。

バックグラウンドチェック(リファレンスチェック)は、裏にある事実を確認する重要なプロセスであり、その情報を得る事に有効な調査です。

特に管理職等のポジションでは、職能、経歴確認だけでなく、ハラスメント行為がなかったかを知っておく事は重要です。また、部下や同僚と上手く調和を取りながら職務に就いていたか等をしっかり確認しておく事は、企業の健全経営に必要不可欠と私は考えます。